『孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本』を読みました [お金も大事]
孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本 (朝日新書)
- 作者: 島澤 諭
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/04/10
- メディア: 新書
横浜市立図書館で借りました。
政府への支払(税金や社会保険等)と、将来の年金等の受給について、現在の高齢世代は支払額よりも受給額が多いため得をし、新生児は支払額より受給額が少ないため損することになり、その差が1億円というのがタイトル。
本書は、「世代会計」という概念を提示し、「高齢者が孫の世代のクレジットカードを使っている」という表現で、いかに若者と将来世代の経済的負担が莫大であるかを指摘している。残るのは孫の借金ばかりだ。
面白いのは、なぜそういう構造になってしまうかという分析だ。
著者は、日本の政治システムとそれを支える選挙制度について、「選ぶのも選ばれるのもお年寄り」であり、若者や将来世代を考慮した政策が実施されない仕組みと指摘している。
つまり、有権者の平均年齢も、投票率が高い世代も、みな高齢世代ということ。たとえ若者が、若者世代に向けた政策を標榜する候補者に投票したところで、高齢世代の有権者は、高齢世代を優遇する政策を掲げる高齢候補者に投票し、当選してしまう。このままでは将来世代は生まれたときから借金まみれだ。子孫に借金を残すことを何とも思わない人たちが動かす国で、若者は希望を持てるわけがないではないか。
現在の年金制度も、そしてそもそも民主主義も、人口ピラミッドの形が歪んでいない状態で、初めて有効な仕組みということなのだろう。完全に現行は制度疲労を起こしているように思えてならない。
選挙年齢の引き下げにより政治の決定権を若者に移し、高齢者の受給レベルを低下すべきと本書は提言しているが、果たして次回の衆議院選挙で、世代会計の視点は議論されるのだろうか。正規・非正規社員の経済格差などよりも深刻な問題だというのは、政治家なら理解しているはずなのに。
是非、子や孫を持つ高齢者に読んでもらいたい本だと思う。
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